好きなのに、この気持ちは届かない・・・。
お前と一緒にいられるものが、どれだけ羨ましいか。
なぁ、、そいつがいなかったら、俺といてくれたか?
そいつより、俺と先に知り合っていたら、俺に好きと言ってくれたか?
考えるだけ無駄だって知っているんだ。
・・・でも・・・・・
「俺はそいつからお前を奪いたい。」
BLINDNESS.
その日、ホグワーツ中で噂が広がった。
「シリウス君、聞いたかい?」
「いや。」
「転入生が来るって噂だよ!」
「僕もその噂なら聞いたことがあるよ。」
「・・・・・・・所詮、噂だろ。」
「・・・・・・・・・あーあ、可愛い女の子だったらどうするんだい?シリウス君。
君のようなリアリストは嫌われてしまうよ。」
「うるせー。俺はこういう性格なんだよ。」
わーわー騒ぐジェームズに不機嫌をあらわに口を尖らせた。
うるさい説教が始まりだしそうな雰囲気に、先にマンドレイクの処置用の耳あてに手を伸ばす。
すると、ここで同じ授業のはずのリーマスが荷物をまとめ始めた。
「ごめん、僕ちょっと約束があって席を外さなければならないんだ。」
「リーマス君!今僕はシリウスと2人きりにされたくないんだ!!」
「じゃあ、ジェームズもついてくるかい?」
「・・・・・・・・・え?約束って?」
「約束というよりは呼び出し。」
「「・・・・誰に?」」
疑問が口を吐いて出て、ジェームズと声が重なった。
それに対しての笑みなのか、呼び出しの相手への笑みなのか・・・
わからないような複雑そうな笑みを鳶色の髪の友人は浮かべた。
そして、ゆっくり口を開いた。
その返答に、自分もジェームズも口を閉じることができなかった。
「ダンブルドア先生。」
「何を言われるんだろう。」
「人狼のことではないと思うな。」
「わかんねぇだろ、そんなこと。」
「全くシリウス君はダメダメだね、人狼のことは校長は承知しているし、
アニメーガスのことがバレているなら、僕らを直々に呼び出すはずさ!!」
でも、ダンブルドアは知ってても何も言わないさ。と、
眼鏡の友人は軽やかに虹色のタイルを蹴って前を歩く。
リーマスだけが暗い顔をしていた。
元気付けようなんて思っていなかったが、
腕が勝手にリーマスの背中を叩いていた。
「待っておったよ、リーマス。」
「校長先生。」
「ん?ジェームズとシリウスも来たか。」
「校長先生、リーマスに一体どんな用事が?」
「来てしまったなら仕方ない。
秘密を守れるなら、一緒に来てくれ。」
「・・・・・・・・・?」
「リーマスである必要はない。
なに、リーマスなら信じられると思うたのじゃ。」
「僕ではダメだって言うんですか?」
「そうじゃない、ジェームズ。
だから今、君らにこの秘密を言おうと言うとるじゃないか。」
「ああ、そうか。
校長先生、僕は秘密を守りますよ。口は堅いです。」
「疑っとらんよ。もちろんシリウスも。」
「・・・・・・・・・。」
半月の眼鏡越しに、あの何でも見透かしそうな目と目が合った。
気まずくて頭を下げるふりをして、
目を柔らかそうな紫の絨毯に向けた。
この時、俺はここについてこなければ良かったのだ。
そう後悔して仕方ない。
その日、俺たちはそいつと会った。
「あー・・・どうも。異世界から来た、:です。」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・。」」」
「・・・・と、いうことじゃ、今日から仲良くな。」
「いや、突然何を言い出すんですか、校長。」
「自己紹介じゃよ、ジェームズ。」
「・・・・・・・・・・・自己紹介って・・・」
異世界から来たという少年を見た。
もう真冬だというのにこの季節に合わない服装をしている。
ヘラリと笑った顔、髪は黒く寝癖が酷い。
背が低くて、発音から名前は異国のものだと思われた。
不思議な自己紹介の後は、ダンブルドアの奇妙な説明が始まって、
「納得してくれ。」と、半ば強引な終わり方をした。
この:という人物は本当に異世界から来たのだと言う。
「ブラックさん。」
「・・・・・・・・・シリウスでいい。」
「なぁ、シリウス。」
「なんだよ。」
「どうしていつも仏頂面なんだ?」
「・・・・・・・・知るか。」
「ははは、シリウスがもっと感じのいい男ならモテモテなんだろうな。」
「いいんだよ、俺はこれで。」
奴が来てから数週間が経って、もうすぐ一月を迎えようとしていた。
俺はこいつに好感を持って、”友人”とまでランクが上がっていた。
そんなある日、奴がそのジェームズと良い勝負なくせ毛をクルクルにしながら現れた。
「いつもよりすげぇな・・・。」と、髪に腕を伸ばした時、俺は気付いてしまった。
自分より、全然低い背、長い睫毛が印象的な綺麗な顔は小さく、
華奢な腰に、少し高い声・・・
「心残りは、あっちに恋人を残してきてしまったんだ。」
「・・・・・・・・・男?」
「当たり前だろう!」
そう、奴は女だった。
別に部屋を共有しているわけでもなかったし、
男と女として気まずくなるような事は今まで一度も無かったが妙に戸惑う自分がいた。
隣りで異世界にいる恋人の話をするこいつは今までにないくらい穏やかで、
それでいて声色に愛しさが込められていた。
不意にムカつく自分のこの気持ちはなんだろう。
いつの間にか、私物化していたのかもしれない。
こいつの隣にいるのはリーマスでもジェームズでもなく俺でなくては嫌だと思ってしまった。
それは、もちろん恋人にだって言えたことだった。
・・・・恋人だって、の隣りにいる権利を持たれたくない。
「・・・・・・・・・・。」
「あ?」
「・・・お前が好きだ。」
「は?今恋人の話してんだぞ!」
女だったことにショックはない。
むしろありがたかった・・・・これで俺は気持ちを隠す必要がなくなるわけだ。
「帰らせない。」
醜い嫉妬をしてるってわかってる。
それでも、もう止められない。
お前は帰らせない。
自分の気持ちに気付いてしまったんだ。
お前が好きだ。お前しかいらない。
奴の腕を引っ張って、自分の腕に無理やり引き込んだ。
香水の香りが鼻を掠めて、さらに盲目になっていった。